▲車を査定に出してから業者に引き渡すまでの流れは、書類さえ揃っていれば思いのほかスピーディ ▲車を査定に出してから業者に引き渡すまでの流れは、書類さえ揃っていれば思いのほかスピーディ

車をスムーズに、少しでも高く売る方法とは?

長年乗ってきた愛車を手放す時は寂しいもの。でも感傷に浸るのは無事に売却できてからにしよう。何よりも「確実に」「少しでも高い値段で」「スピーディに」売ることが最優先。

オトクに車を売却する方法やスムーズな段取りなど、車を売る時に必要となる知識をまるっと紹介する。

中古車の買い取り価格はナマモノ

まずは中古車の販売価格が決まる仕組みについて、簡単におさらいしておきたい。売却価格とも密接にかかわってくるからだ。

基本的に、中古車の販売価格は市場の重要と供給のバランスによって決まる。

例えば、新車時に1000万円もした高級車でも、中古車として買う人が誰もいなければ価格はゼロに等しくなる。レアなブランドの輸入高級車などではよくある話だ。

逆に廉価な車であっても、買い求める人が多く、かつ中古車市場に流通している台数が少なけれ売却額は高くなる。

台数や期間で限定発売された中古車が高値を維持、あるいはプレミア価格が付くケースは少なくない。

そして需要と供給のバランスは常に変動しつづけるため、同じ車種、同じ状態でも販売価格は一定ではない。

▲限定販売されて現在でも人気のある車種は、製造から数十年を経ても高額査定されることも▲限定販売されて現在でも人気のある車種は、製造から数十年を経ても高額査定されることも

それは車の買い取り価格も同様だ。買い取り価格は車種やグレードごとの「基準価格」から、車の状態や装備に応じて「加点」「減点」して決められる。

価格决めのベースとなる基準価格は、販売価格の変動に影響されて変わっていく。基準価格を決める仕組みや加減点の項目は業者によって異なるが、いずれにせよ買い取り価格は“ナマモノ”なのだ。

要点をまとめると「買い取り価格は常に変動する」「買い取り価格は新車時の価格でなく中古車の販売価格をベースに決まる」といううこと。この2点は、ぜひ頭に留めておいてほしい。

高く売るためには「一括査定」を利用するのが便利

車を売る時に、初めに考えなければいけないのが売却先と売却手段。かつては選択肢が少なかったが、現在は多彩な売り方がある。それぞれの特徴を見ていこう。

■下取り
車の購入と引き換えに現在の車を売ること。多くの場合、下取り金額は新たに買う車の購入金額の一部に当てられる。

下取りの基準額は主に車種、グレードごとに定められた金額から計算される。そこから車の状態に応じて加減点を行い、査定額が算出される。

購入店が売却先なので、ユーザー側の手間が少なくて済むのがメリット。一方でデメリットは、売却先が限定されるため、高額査定になりにくいこと。

新車ディーラーでは査定自体が有料というところも多い。ただし最近では新車ディーラーでも買い取りに力を入れる傾向があり、一概には言えない。

新車ディーラーの場合、自社が扱うメーカーの車なら査定する側も詳しく、高額査定になる傾向にある。逆に他メーカーだと過小評価されやすい。

また、人気のメーカー純正オプションは加点評価されるが、アフターマーケットのパーツが付いていると減点されたり、車検に通らない車は下取ってもらえなかったりする。

■買い取り
買い取りを専門に行っている店舗に売却すること。代わりの車を買うかどうかは関係ない。査定と契約は店舗でもできるし、出張してもらい自宅などで査定、契約もできる。

基準価格は主に業者間のオークション相場、あるいは相場をベースにして独自に定めている。なお、買取店のほとんどは査定無料だ。

市場の動向が反映されやすく、業者間の競争を意識しているため、高額査定になりやすいのがメリット。加減点の基準は業者によって様々。

下取りで低く評価されがちな希少車や改造車、事故車(修復歴車)、不動車であっても専門の買取店があるため、売り先を選べば高く売れる可能性がある。

デメリットは、売却のためだけに買取店へ連絡するなど手間が掛かること。さらに、車の売却と新しい車を納車するタイミングがズレて、車がない期間や2台車がある期間が生じる可能性があることも難点だ。

しかし、多くの買取店は対応がスピーディで、かつ出張買い取りを行っているので、ユーザーの段取り次第で解決できる。

■一括査定
近年、普及した売却方法。売却先は上記と同じ買取専門業者だが、インターネットで一度申し込みするだけで、複数の業者に査定依頼できる。メリットは業者間の競争を促すことで高額査定を引き出しやすいこと。

複数業者への依頼となるため、出張査定を提案されるケースが多い。また、通常の買い取り同様、査定無料が大半だ。

デメリットは、複数業者から連絡が来るので対応に追われやすいこと。ただ、サービスによっては連絡の希望時間帯を指定したり、連絡手段を限定したりすることで、負担の軽減が可能だ。

▲一括査定なら、サイトから必要項目を入力するだけで複数の買取店に査定依頼できるので便利▲一括査定なら、サイトから必要項目を入力するだけで複数の買取店に査定依頼できるので便利

■個人売買
ネットなどを利用して個人間で車を売却する人も、最近では増えている。業者を通さないため、高く売却したい場合には選択肢のひとつとなるだろう。

ただし、基本的には個人間での取り引きであるため、契約内容やコンディションなどをめぐってトラブルになりやすい。サービスを利用しても、運営サイト側はトラブルの責任を負ってくれないケースがほとんど。

加えて「オークション形式のため、売却の時期も価格も事前分からない」「買い手がつかない場合は希望金額を下げざるを得ない」というデメリットも見逃せない。

ベストな売るタイミングを検証

「車を少しでも高く売却するなら、売り先だけでなくいつ売るかも大事」とよく言われる。そこで、巷でウワサされる「売り時」の真偽を検証してみた。

高く売れる季節はある?
3月は新生活に向けて、車の販売台数が増える季節。そうなると「需要が増えるのだから、買い取り価格も高くなる」と考えるのが自然だが、正解は「どちらとも言えない」だ。

たしかに3月は需要が増えるが、同時に手放す人(=供給)も増加。バランスが保たれたままなので、買い取り価格への影響もほとんどない。その事実は、中古車の販売価格が3月になって急に高くならないことからも明らかだ。

ただし、ハイシーズン前は買取店が仕入れ(=買い取り)に力を入れたい時期であることは間違いない。ここぞとばかりに「買い取ろう」と躍起になっている買取店を見つけて売却すれば、愛車を高く売れる可能性はある。

その点において、複数業者に一挙に査定依頼できる一括査定は効果的だ。

走行距離3万km、5万kmという区切れを迎える前が売り時?
これも、よく囁かれる噂のひとつ。オドメーター(走行距離計)がくるっと回る前に手放した方が、確かに高く売れそうだ。

しかし、実際の査定はそんなに曖昧なものではない。走行距離が増えるほど減点されるのは事実だが、加減点の基準は車種と年式、初度登録からの年数によって詳細に決められている。

例えば加減点プラスマイナスゼロとなる走行距離は、初度登録から4年目までは年平均10,000km、5年で平均9,000km、6年で平均6,000kmといった具合(これは一例で実際には車種によって異なる。

経過年ごとに加減点ゼロの基準走行距離が短くなることに注目。低年式車ほど減点の基準が厳しくなる)。

つまり、走行距離が短いに超したことはないが、必要以上に気にする必要はないってこと。

▲走行距離が短いほど査定で有利だが、キリが良いかどうかは査定額に関係ない▲走行距離が短いほど査定で有利だが、キリが良いかどうかは査定額に関係ない

車検は受ける前? 受けた後?
売ろうとしている車が車検直前だったりすると、タイミングを迷うことだろう。答えは「車検前に売ってしまうが吉」。

なぜなら、査定時に車検残期間は加点として計上されるものの、ユーザー自身が車検を通すための一般的な費用が丸々反映されるわけではないから。

買い取り業者は車検残が1か月未満の車をオークションに流通させる場合、車検を通すか、一次抹消する必要がある。

業者が車検に掛ける費用はユーザーよりも一般的に低いため、結果的に自ら車検を通す方が高くついてしまうのだ。ちなみに、もし車検が切れてしまっている場合でも、そのまま売却する方がオトクとなるケースが多い。

新車保証が残っている期間の方が良い?
手放すのが新車の場合、新車保証が残っている場合がある。これはもちろん、査定時にもプラスとして有利に働く。

新車保証には、消耗品などを除く多くの部品について保証する「一般保証(3年または60,000kmなど)」と、走行に欠かせない部位など重要な昨日を果たす部品に適用される「特別保証(5年または100,000kmなど)」があるが、特別保証だけでも残っていると有利。

特にハイブリッドカーなどで駆動用バッテリーが特別保証に入っている車種は、保証期間内かどうかが重視される傾向にある。

▲ハイブリッドかーやEVはバッテリーの寿命が査定額に大きく影響しがち。保証期間内がいつまでかあらかじめ確認しておこう▲ハイブリッドかーやEVはバッテリーの寿命が査定額に大きく影響しがち。保証期間内がいつまでかあらかじめ確認しておこう

売却に必要な書類と手続きについて

売却時に必要となる書類や手続きは、売却先や売却方法を問わず、全て同じ。必要な書類は普通自動車と軽自動車で異なる点に注意しよう。


■所有者が用意するもの

・自動車検査証(車検証)
車検を通したことを証明し、かつ、その車の情報が記載されているもの。売却時に限らず、車両運行時には必ず携行が求められているので、グローブボックスなどに保管してあるはずだ。引っ越しや結婚などで車検証に記載されている内容と氏名や住所が変わり、自動車検査証と印鑑登録証明書の住所が違う場合は、以下の書類も必要となる。

・住所変更が一度あった場合→住民票
(法人の場合は登記簿謄本)

・住所変更を複数回経た場合→戸籍の附票または住民票の除票

・結婚などで姓が変わっている場合→戸籍謄本
(履歴事項全部証明書)


紛失してしまうと一大事だが、管轄する陸運支局で理由書と手数料納付書、第3号様式と呼ばれる申請書(陸運支局にOCR用紙がある)を提出すれば即日再発行できる。委任状を書けば第三者に代行してもらうことも可能だ。

なお、所有者と使用者の名義が違う場合には、売却することができない。所有者に「移転登録(いわゆる名義変更)」してもらう必要がある。

・印鑑登録証明書(軽自動車は不要)
普通自動車を売却する際に必要な実印の登録証書。市区町村役場のほか、印鑑登録証(カード)があれば駅などにある行政サービスコーナーでも発行できる(法人の場合は法務局のみ)。有効期限があり、発行日から3か月以内のもののみ有効。

・自賠責保険証明書
いわゆる強制保険の証明書で、加入していない人はいないはず。この書類がなかったり、期限が切れていたりすると自賠責保険を次の所有者に名義変更することができないだけでなく、自宅から店舗まで車を移動することもできない(記載氏名と運転者が違ってもOK)。次の持ち主に引き継がれる分の費用は、売却額に上乗せして計上されるケースが多い。紛失してしまった場合には、加入した保険会社に申請する必要がある。

・自動車納税証明書
自動車税が未納だと次の車検を受けることができないため、通常は車の売却も認められない。売却時には、最新の納税証明書が必要だ。正確にいうと同一都道府県内で車検を更新する際には納税証明書は不要(納税自体はされていなければならない)が、買い取りの段階では未定なため、売却時に提出が求められる。書類の有無だけでなく、収納印が押されているかも要チェック。

紛失してしまったな場合には、普通自動車は自動車税事務所で、軽自動車は市区町村役場で、即日再発行できる。

・実印 (軽自動車は認印可)
市区町村で登録済みの「実印」が普通自動車の売却には必要。委任状や譲渡証明書、自賠責保険の名義変更といった書類に捺印するためだ。印鑑証明書と印影が同じであるかどうかを改めて確認しておこう。軽自動車の場合は、認印で問題ない(スタンプ印は不可)。

・振込口座情報
売却金額を先方に振り込んでもらう「金融機関名、支店名、口座番号、口座名義」を控えておけばOK。

・リサイクル券
自動車リサイクル制度の預託金を支払ったことを証明する書類。紛失してしまうと、なんと再発行できない! だが、[リサイクル料金検索(http://www1.jars.gr.jp/index.html)」から「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷することで代用可能だ。

■自動車買取店に用紙があり、記入するもの
・譲渡証明書(普通自動車のみ)
・自動車検査証記入申請書(軽自動車のみ)
・委任状


車を売るタイミングで取り寄せる必要があるのは、普通自動車の「印鑑登録証明書」のみ(住所や姓の変更があった場合を除く)。他は紛失していない限り、常備してあるはずのものだ。車を引き渡す前に全ての書類が揃っているか、管理しておこう。

▲売却時の必要書類は万一紛失してしまっても再発行や代用が可能だが、手間を防ぐためにも普段から所在を確認しておくこと▲売却時の必要書類は万一紛失してしまっても再発行や代用が可能だが、手間を防ぐためにも普段から所在を確認しておくこと

車を売る時の流れ

売却で必要となる行程は、以下の5ステップ。買い替える場合は新たな車が納車される日と、現在の車を引き渡すタイミングを考えて全体のスケジュールを組み立てよう。

特に買い取り業者に依頼するのが初めて、という方は、先方のスピード感の早さに驚くことがあるかもしれない。買い取り業者にとっては、いかに短い日数で引き取った車を流通させるかが死活問題となるからだ。売却先とのトラブルを防ぐためにも、車両引き渡し希望日は最初から明確にしておきたい。

STEP1 車の売却方法を決める
「下取り」「買い取り」「一括査定」などの中から(上記参照)、自分に適した売却手段を選ぼう。複数の売却先に査定依頼し、検討するのがベストだ。

STEP2 買取業者を決める
提示された査定金額を見比べて、最も良い条件の一社を選ぶ。見積書の内容はもちろん、車両の引き渡し日や入金日、売却後に故障が見つかった場合の対処方法など、契約内容もよく確認すること。

STEP3 売却の手続きをする
前述の必要書類を見て、紛失してしまっているものがないか確認。印鑑登録証明書を最寄りの役場、行政サービスコーナーなどで発行しておく。譲渡証明書や委任状などの用紙は販売店、買取店で用意してくれる。

STEP4 車両を引き渡す
必要書類とともに車両を引き渡す。買い取り、一括査定の場合、不動車などを除いて、車両引き取りも無料となることがほとんどだ。

STEP5 入金を確認する
契約した内容通りの金額が所定の口座に振り込まれているか確認し、売却ミッション終了!

比較検討することが車をスムーズに、高く売るためのポイント

誰に売るべきか、いつ売るべきかは個人の事情、車の状態によって変わる。くどいようだが、複数の売却手段を検討し、見比べることが賢いやり方であり、そのために一括査定は現状としてベターな売却手段と言えるだろう。売りたい金額と予定を自分の中ではっきり定めることも、スムーズな取り引きへの近道となる。

text/田端邦彦