▲車を少しでも高く売るコツは、買い取り金額の目安を知り、売るタイミングと売るべき相手を見極めること。普段のメンテで査定額アップにつながることもある ▲車を少しでも高く売るコツは、買い取り金額の目安を知り、売るタイミングと売るべき相手を見極めること。普段のメンテで査定額アップにつながることもある

いつ、誰に、どう売るかが高値売却のポイント

「車を手放すなら少しでも高く売って、次の車を買う資金の足しにしたい」と思うのが当たり前。しかし同じ条件の車でも「誰に売るか?」「いつ売るか?」などによって価格は大きく変わる。そこで車を高く買い取ってもらうためのコツを、年間400台以上を査定する中古車買取のプロ、Y・Nさんから聞いた。

商品の価値を知ることが高く売却するコツ

誰に売るにしても、まずは情報収集から。売却額の見当がついていれば買取店などと具体的な金額の話ができ、交渉がしやすくなる。ところが車の売却では「この車種と装備、年式、走行距離なら○○円」と、はっきりした数字が出ない。売る相手やタイミングだけでなく、車の状態によっても売却額は変化するからだ。

そのため、売却額の目安を知ることのできる方法をいくつか紹介する。しかし、これも正確な価格がわかる手段ではない。より精度を高く売却額を知るために、複数の手段を試してみるのがベターだ。

売却額の目安が分かれば業者から提示された金額の判断材料となるが、最初から「○○万円でしか売らない」と決めつけるのはNG。売り時を逃しかねない。「できれば○○万円、最低でも○○万円以上で」と、幅を持たせることが賢く売り切るコツだ。

■売却価格の目安を知る方法1 中古車相場価格から知る

実際に売られている車の価格帯から、売却価格を予想する方法。例えばカーセンサーで確認するなら、パソコンでTOPページを開いて「メーカー車名を選択する」で車種を選ぶ。中古車一覧画面に遷移したら、検索パネル下に「中古車相場」という文字が表れる。

▲「メーカー車名を選択する」で車種を選ぶと「中古車相場」が表示される。このグラフが見られるのパソコンのみ。スマートフォンでは表示されない▲「メーカー車名を選択する」で車種を選ぶと「中古車相場」が表示される。このグラフが見られるのパソコンのみ。スマートフォンでは表示されない

この「中古車相場」をクリックすると、次の図がポップアップされる。

▲「本体価格と年式」「本体価格と走行距離」「年式と走行距離」と3つの掛け合わせで、カーセンサー掲載車両をグラフ化。画像はホンダ フィットの本体価格と年式の分布図▲「本体価格と年式」「本体価格と走行距離」「年式と走行距離」と3つの掛け合わせで、カーセンサー掲載車両をグラフ化。画像はホンダ フィットの本体価格と年式の分布図

まず「年式と走行距離」のグラフで、愛車と同年式の平均走行距離帯を確認。その上で、自車の走行距離が多めなのか、少なめなのかを判断する。次に「本体価格と年式」のグラフに切り替える。走行距離が多めなら同年式のボリュームゾーンより本体価格は少し低め、走行距離が少なめなら本体価格はちょっと高めだろう、と推測できる。さらに「本体価格と走行距離」も調べれば精度が増すだろう。

スマートフォンの場合は「カタログ」の車種ページに中古車平均価格が掲載されている。走行距離別でなく、掲載されている同車種すべての平均値なので正確性には欠くが、手軽に販売価格を知ることが可能だ。

ここからが本番だ。これは「中古車の販売価格」なので、車の売却額を知るためには買取店や仲介業者、販売店の手数料を引く必要がある。車種や程度によって左右されるものの、売却価格の目安は販売価格の7割前後と言われている。つまり、愛車と同年式の販売価格に0.7を掛けた数字が、売却価格の目安となるのだ。

なお、これは買取価格の上限値で、売り先によってはさらに売却額は下がる。もちろん、この算出方法は推測でしかない。あくまで見当をつける程度に留めよう。

■売却価格の目安を知る方法2 シミュレーターを使う

トヨタや日産のサイトでは、新車ディーラーで下取る場合の参考価格シミュレーターを公開している。販売価格から予想する場合と違い、計算する必要がないので非常に便利だ。しかも、他メーカーの車も国産車なら参考価格を調べられる。ただし、こちらもあくまで目安。実際の下取り価格は地域や時期、車の状態によって大きく変化するので、正確な数字を算出するの難しいのだ。

出典:トヨタ「下取り参考価格情報」

▲トヨタのサイト。他メーカーの車でも下取り価格を調べられる ※出典:トヨタ「下取り参考価格情報」

実際に使用例を挙げてみよう。トヨタの「下取り参考価格情報」ではTOPページでメーカーと車名、年式を入力すると、ボディタイプとモデル(型式)の選択画面に遷移する。さらにグレードを選択すると、参考価格が表示される(走行距離の選択はなし)。

一方で日産の「下取り参考価格シミュレーション」 もほぼ同じ選択項目だが、○○~○○万円と価格に幅をもたせているのが違い。ホンダ フィットの2014年式「13G LパッケージCVT」をシミュレートしたところ、トヨタでは54万円、日産では37-47万円という参考価格が算出された。前述したようにあくまで参考価格だが、同じく車種、同じ条件でもメーカーによって下取り価格に差が出るのは興味深いところだ。

■売却価格の目安を知る方法3 オークション相場を調べる

売却された車の大半は、業者間のオークションに出される。そして、買取店はオークションの実績をデータ化し、車を根付けする際の根拠にしている。つまり、自分の車と条件が近い車のオークション実績を知れば、売却価格の上限も推測できる。

しかし、オークションは原則的に中古車業者しか参加できない。落札価格も原則的に業者しか見れないが、実は個人の車を代行出品する業者が存在する。そうしたオークション代行サービスを行う業者のサイトには、過去に出品された車の実績を掲載していることがある。店頭販売価格よりも実際の買取価格に近い数字を知ることができる。ただ、出品時点の価格であり、掲載されている車種も限られているのが難点だ。

高く売れるタイミングは存在しない!?

少しでも高く売るには、どのタイミングで手放すべきか? これは誰もが気になるところだろう。よく「3月の需要期直前が良い」や「決算前が良い」「走行距離5万kmを迎える前に」と言われるが、実際にはほとんど関係ない。

需要期前は供給も同時に多くなる時期だし、決算時期は会社ごとに異なるので分からない。また走行距離についても○万kmという大雑把な区切りで査定が変わるわけではない。仮にタイミング次第で多少プラスになるとしても、中古車は時間が経つほど価値が低くなっていく。時期を待つことで失うマイナスの方が大きい場合もある。

ただし、車検については話が別。売りたいのが車検に近い時期なら、車検を通す前に売ってしまった方がオトク。車検残期間は査定額に反映されるものの、ユーザーが自分で支払う車検費用と差し引きするとマイナスになる可能性が高いからだ。

▲車検、整備など費用のかかることは、売却直前に行うべきでなく、そのままでOK▲車検、整備など費用のかかることは、売却直前に行うべきでなく、そのままでOK

少しでも高く売るには「一括査定」が有利

売却価格の見当がついたら、次は売却先を選定しよう。中古車を売るには「次の車の購入先で下取りに出す」「特定の買取専門業者に売る」など様々な手段がある。できるだけ高い値段で、かつ確実に売るには一括査定を利用するのがオススメだ。

一括査定とは、複数の買取店に査定をまとめて依頼できるサービスのこと。一社に限定するよりも高い売却価格を引き出しやすい。

そんな一括査定を利用するには、ちょっとしたコツがある。そのポイントを紹介しよう。

・最初に来た一社で決めない
一括査定を申し込むと複数の業者からすぐに連絡がくる。順番に出張査定の日時を決めていくのだが、査定を終えたその場で買い取り価格を提示してくれる業者が多い。その際の営業手法が「通常は○○万円だが、今ここで当社に決めてくれたら○○万円まで上げます」というもの。そう言われると「ここで決めないとソンかも」と不安になるかもしれないが、それでは一括査定を利用した意味がない。複数社の見積もり額を比べ、一番高かったところに売るのが賢い方法だ。

・希望額を最初に明かさない
売却額の見当をつけるべきと言ったが、いきなり相手に伝えてしまうと、それ以上の金額にはなりにくい。希望額は腹の内に収め、「もう一声!」と交渉を有利に進める材料としたい。だが、交渉する相手にウソをつくのは禁物。例えば「A社は○万円もの高値で買うと言っていた」とウソをついても無意味。買取のプロは「オークション相場を上回る金額で買い取るはずがない」と見抜く。現状を正直に伝え、ぎりぎりの交渉をするのが高く売るコツだ。

・電話での金額を信用しない
買取店に電話で予約する際、交渉を有利に進めるため「その車種、年式でしたら○○万円ですね」と高めの買い取り価格を提示してくることがある。しかし査定後には、それより低い金額提示されるケースも少なくない。車の状態によっては高くなることもあるが、大切なのは電話口での言葉は鵜呑みにせず、複数社の査定額をきちんと見比べることだ。

・複数業者をバッティングさせる方法も
「一社ずつ対応するのが面倒」という方は、複数社の査定日を同日同時刻にまとめてしまうの手。その際、業者には予約の時点で他社とバッティングすることを断っておく。この形式は、複数社が同時に見積額を提示し、最も高額だった店舗とその場で契約できる可能性が高い。交渉の手間が省けるのも大きなメリットだ。逆に「もっと高い金額で売れるかも」と思っても、その場で契約しなければならないことがデメリットとなる。時間がない方にイチオシの方法だ。

売却前に効果が期待できる行為と、意味のない行為

実は「売却直前にキレイにする」というのは、買い取りのプロによると十分に効果があるという。買い取る側は引き取った車をいち早くオークションに流し、台数を稼ぎたいのが本音。洗車や磨きの手間がかからない車は、多少なら査定額を上げても良いそう。もちろん、売る相手によって効果は異なるが、塗装や内装の状態に自信があるなら査定前に洗車したり、磨いたりするのは十分に有効だろう。

▲外観が汚いとコンディションを正確に判断できず、査定額を低めにするしかないこともあるそう。査定前に洗車しておいて損はないだろう▲外観が汚いとコンディションを正確に判断できず、査定額を低めにするしかないこともあるそう。査定前に洗車しておいて損はないだろう
 

日頃からどれだけ愛車を大切に扱ってきたかも査定額に影響する。高く売るために日頃から気を付けたいこと、逆にやっても意味がないことをまとめてみた。

■普段から心掛けたいこと
・可能なら屋根下に保管する
外板の塗装や内装の状態が悪いと減額される。雨ざらしは、想像以上にボディにダメージを与える。可能なら、密閉式のガレージやカーポートなどで車を守りたい。月極駐車場などで難しい場合はカバーを掛けるなどして塗装が傷まないように心がけると良い。

・下まわりはマメに洗車してサビを防ぐ
外から見えない車の下まわりもチェックされる。海辺や雪上を走行した後は放置せず、すぐに洗車すべし。

・ペットを乗せる際は、シートカバー+ケージを準備
ペットを乗せていた車は減点される。ただし、内装に影響を及ぼしていないなら、査定額への影響もなし。臭いがつかないように細心の注意を払うこと。

・車内は禁煙に
禁煙、喫煙も査定項目。臭い・ヤニがつかないようタバコは車外で吸おう。シートの焦げ跡はマイナスポイントのひとつだ。

・カスタムしても、純正品を保管しておく
下取りの場合、カスタムは高評価につながりにくい。しかし、タイヤやマフラーなどを社外品に交換してあっても、純正品を部品として保管してあれば問題なし。高い査定額がつくことも期待できる。下取り側は車を純正の状態に戻して売却、外したカスタムパーツを部品単体で売却するなど、現金化する手段が増えるからだ。

■直前にやっても意味のないこと
・前日に慌てて洗車
ボディの塗装が日焼けなどで傷んでいないか、色褪せしていないかは査定額に影響する。それは確かだが、洗車してあるか否かで査定額が上下することはない。車内の清掃についても同様だ。ただ、汚れていると査定士がチェックしにくいので、洗車くらいはしておくべきだろう。

・DIYでの補修は逆効果
外板を傷付けた箇所を自分で直してもほぼ間違いなく買取店にバレる。DIYでの補修はしなくてOK。


・壊れている所を慌てて修理
故障している箇所があるとマイナス査定になる。しかし、車検と同様に修理費の方が査定額より高くつくことがほとんどなので、そのまま売却しよう。

ポイントを押さえて賢く売り抜く

ここまで紹介してきた高く売るためのコツを以下にまとめてみた。

・査定申し込み前に車の価値を調べ、売却額の目安を定めること
・一括査定を利用するのがオトク。しかも確実に売却できる
・車検は受ける前、修理はする前に売却するのがベター
・査定額を上げたいなら、普段から愛車のメンテナンスを心掛ける


中古車は売り方次第で価格が大きく変わる。車の価値を把握し、高額査定を出してくれる買取店を見つけ出すことが、オトクに売却する効果的な方法だ。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、Adobe Stock、PhotoAC