▲査定申し込みから引き渡しまでの流れをイメージしておけば、スムーズに売却できる ▲査定申し込みから引き渡しまでの流れをイメージしておけば、スムーズに売却できる

手間なく車を売るための流れを知ろう

車の売却は段取りと効率、スピード感が命。車の寿命は長いが、車の資産価値は大半が新車から5~7年で失われてしまう。面倒なイメージのある車の売却だが、効率良く行えば短期間で済ませることができる。

売却方法の検討から売却金の入金までの流れを5STEPに分けて、ひとつずつ確認していく。また、売却完了から逆算して、何日(何週間)前から取り組むべきかの目安も記しておいた。

STEP1 車の売却方法を決める【1~2週間前】

車の売却方法は、主に3つ。売るだけなら「特定の買取店に売る」か「一括査定を利用する」、次の車に乗り換えるならディーラーや中古車販売店に「下取りに出す」も選択肢に加わる。

他に個人売買やオークション代行といった手段もあるが、現状ではレアケースで、流れや手続きが前述の3手段とは全く異なるので今回は割愛する。

3つの売却方法のメリットとデメリットを比べてみて、自分に最適な手段を選ぼう。

【特定の買取店に売る】
買取店を自分で探して売却する方法。買い取りが専門、中古車相場の動きに敏感で競合店を常に意識しているため、高く売却できる可能性が高い。極端に状態の悪い不動車や事故車など、一括査定では対応しづらいレアケースも売却先を見つけられるメリットもある。

最近では買取店以外にも、中古車販売店で買い取りに力を入れている店舗があり、それらも売却先の候補となる。査定や車受け渡しは店舗に自分で車を持ち込む方法のほか、出張を依頼することも可能。見積はもちろん、出張査定や引き取りも大半の買取店では無料だ。

■特定の買取店に売るメリット
・高額で売却できる可能性が高い
・売却先を自由に選べる
・不動車などレアケースでも買い手を見つけやすい
・複数業者からの電話や査定に対応する手間がない

■特定の買取店に売るデメリット
・一括査定より高額査定を引き出しにくい

【一括査定を利用する】
一回の申し込みで、複数の買取店に査定を依頼できる。買取店は店舗ごとに様々な得意分野があり、同じ車でも査定額は異なる。複数の買取店が集まるため自ずと競争が生まれ、最も高額を提示してくれる一社を手間なく選べる。一括査定の場合、ほとんどが出張査定を提案してくれるのもうれしい。

■一括査定で売るメリット
・他の2手段より、高額査定を引き出しやすい
・複数の店舗に査定を依頼する手間がかからない

■一括査定で売るデメリット
・複数の買取店に対して連絡、査定に対応する必要がある

【下取りに出す】
乗り替える場合、次に車を購入する販売店に、古い車を下取りに出すのも選択肢のひとつ。購入と売却を同時に行えるため、引き取りと納車のタイミングを合わせやすく、3つの売却方法の中で最も乗り替えの手間がかからない。

ディーラーなどは買い取り専門でないため、「他の方法に比べて売却額が低くなりやすい」「査定や引き取りが有料な場合もある」など、車を売却するなら買取店の方が良いと言われてきた。だが最近ではメーカー直系の買取専門店が登場するなど、その差は縮まりつつある。

■下取りのメリット
・購入と売却が一ヵ所で済み、手続きの手間が最小限となる
・車の引き取りと納車のタイミングを合わせてくれる

■下取りのデメリット
・売却額が低くなることもある
・査定や引き取りが有料になるケースが多い

また、この段階からSTEP2「売却先を選ぶ」の準備を進めておくとスムーズだ。

自分の車と近い状態の同車種がいくらで売られているか調べておくと、売却額の見当を付けやすい。一般的には、査定額は販売価格の7~8割程度が上限と言われている。ただ、これは一括査定を含む買取店に売る場合の割合で、下取りの場合はもっと低い。同時に、売却時の必要書類を事前に確認しておき、紛失しているものは再発行しておく。

STEP2 売却先を選ぶ【6~9日前】

次は査定を依頼して売却先を選ぶ。この段階でのハイライトは、やはり査定当日だ。買取店を直接訪ねても、出張査定でも、査定にかかる時間は15分~1時間程度。外観や内装はもちろん、下まわりやエンジンの調子などもチェックされる。

汚れている場合は洗車しておいた方が無難。さらに、車を引き渡した後に「査定時に発見できなかった損傷が見つかった」と問題になっても困るので、事故歴や交換歴などは分かる範囲で申告しよう。「じっくり調べてください。車両引き渡し後の減額には応じません」と伝えておくのも手だ。

▲査定時に車が極端に汚れていると傷などが判別できず、引き渡し後に再見積もりとなるケースも。査定前は洗車しておくのが無難▲査定時に車が極端に汚れていると傷などが判別できず、引き渡し後に再見積もりとなるケースも

売却方法それぞれの手順は以下の通り。

【特定の買取専門店に売る場合】
買取店のホームページやネットの評判などを参考に店舗を選ぶ。直接訪れるか、出張査定を依頼する。幅広い車種を扱う大手買取店のほか、ヴィンテージカーが得意なところ、事故車や不動車を専門に扱っているところなど得意分野は様々。自車の特性に合わせて、買取店を選ぶと良いだろう。

査定額や条件に納得できたなら、その場で売却を確約するのもアリ。見積書を発行してもらい、車両と必要書類の引き渡し日を決める。

【一括査定を利用する場合】
まずサイト上の入力フォームから申し込む。例として「カーセンサー簡単ネット車査定」で、一括査定を申し込む時の手順を紹介していこう。

▲「カーセンサー簡単ネット車査定」をパソコンで開いた際のトップページ。売りたい車のメーカー、車名、車タイプ、事故歴、郵便番号を入力フォームから選んで申し込みスタート▲「カーセンサー簡単ネット車査定」をパソコンで開いた際のトップページ。売りたい車のメーカー、車名、車タイプ、事故歴、郵便番号を入力フォームから選んで申し込みスタート
▲こちらの画面に遷移するので、申込みに必要な車両の情報、氏名、住所や連絡先などを順番に入力する▲こちらの画面に遷移するので、申込みに必要な車両の情報、氏名、住所や連絡先などを順番に入力する
▲売却希望時期や連絡希望時間などがある場合、メールアドレス入力欄の下にあるリンクをクリックして「任意項目」の欄に入力する▲売却希望時期や連絡希望時間などがある場合、メールアドレス入力欄の下にあるリンクをクリックして「任意項目」の欄に入力する
▲すべて入力し終えると、フォームの右に「査定申込み先」一覧が表示される。査定して欲しい買取店のみをチェックボックスで選ぼう。各店舗の詳細(住所など)も表示できる▲すべて入力し終えると、フォームの右に「査定申込み先」一覧が表示される。査定して欲しい買取店のみをチェックボックスで選ぼう。各店舗の詳細(住所など)も表示できる
▲そしてフォーム下に表れる「確認画面へ」をクリック。申込み内容の確認画面に切り替わるので「同意の上、申し込む」をクリックして申込み完了▲そしてフォーム下に表れる「確認画面へ」をクリック。申込み内容の確認画面に切り替わるので「同意の上、申し込む」をクリックして申込み完了

申し込み後すぐに複数の買取店から連絡がくるので、査定の日時を順番に決めていく。査定日をバラけさせると時間がかかるので、休日などに複数社を集めて、一日で査定を終わらせると効率的だ。

ひと通り査定が終わったら結論は先延ばしにせず、すぐに決めた方がいい。一括査定に限らず、査定額には有効期限があり、時間を空けると変わってしまう可能性があるからだ。

期限は買取店によって異なるが、長くて2週間程度。短いと数日となる。複数社から提示された金額と契約条件を見比べ、納得できたら売却先を決めて連絡。確約後に見積書を出してもらい、車両と必要書類の引き取り日を決める。

【下取りに出す場合】
下取りの場合、売却先は次の車を購入する店舗と同じになるので選ぶ余地はない。査定額も提示された金額を受け入れるのが一般的だ。交渉した結果「下取り額は上がったが、購入額の値引き額が減った……」なんてこともあるので注意しよう。

STEP3 売却の手続きをする【3~6日前】

いずれの売却方法でも必要となる書類は同じ。所有車が用意するものと店舗側が用意するものがある。ただ、普通自動車と軽自動車では内容が異なるので要注意だ。

■所有者が用意するもの

・自動車検査証(車検証)

車検を通したことを証明する書類。車検証の記載と氏名や住所が異なっていても再発行する必要はないが、印鑑登録証明書と記載が異なる場合には、以下の書類が必要となる。

・住所変更が一度あった場合:住民票
(法人の場合は登記簿謄本)

・住所変更を複数回経た場合:戸籍の附票または住民票の除票

・結婚などで姓が変わっている場合:戸籍謄本
(履歴事項全部証明書)



紛失した場合には、管轄する陸運支局で理由書と手数料納付書、第3号様式という申請書(陸運支局にOCR用紙がある)を提出すれば即日再発行可能。委任状があれば買取店などに代行してもらうこともできる。

ちなみに、ローン残債があって所有者と使用者の名義が異なる場合、あるいは支払いが終わっていても所有権解除されていない場合、そのまま売却することができない。別途「移転登録(いわゆる名義変更)」が必要となる。

・印鑑登録証明書(軽自動車は不要)
市区町村(法人の場合は法務局)に実印を登録されていることを証明する書類。発行日から3ヵ月以内が有効となる。住所などの変更があった場合や紛失した場合を除き、売却時に必要な書類の中で唯一、直接足を運んで発行しなければならない。

・自賠責保険証明書
自賠責保険に加入していることを証明する書類。有効期限が切れていると次の所有者に名義変更できないため、証明書が必要となる。紛失した場合でも保険会社に申請すれば即日再発行できるが、コピーは不可で原本を郵送してもらわなければならない。

・自動車納税証明書
当該年度分の自動車税を支払ったことを証明する書類。未納だと次の車検を受けられない。最新の納税証明書であることが肝心だ。

紛失した場合には、普通自動車は自動車税事務所で、軽自動車は市区町村役場で即日再発行できる。

・実印 (軽自動車は認印可)
委任状や譲渡証明書、自賠責保険の名義変更に必要な書類などに捺印する。軽自動車の場合、認印でもOKだが、スタンプ印はNG。

・振込口座情報
売却金額を先方に振り込んでもらうため、金融機関名と支店名、口座番号と口座名義をメモしておこう。

・リサイクル券
自動車リサイクル料金の支払いを証明する書類。新車登録時、もしくは車検更新時に発行され、所有者が変わっても引き継がれているはず。紛失してしまっても再発行できないが、「リサイクル料金検索」から「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷すれば代用できる。

▲売却を検討し始めた段階で、すべての必要書類が揃っているか確認しておこう▲売却を検討し始めた段階で、すべての必要書類が揃っているか確認しておこう

■自動車買取店、購入店舗に用紙があり、記入するもの
・譲渡証明書(普通自動車のみ)
・自動車検査証記入申請書(軽自動車のみ)
・委任状


上記は買取店が用意してくれるため、店頭などで記入、捺印すれば問題なし。自分で取り寄せる必要はない。

STEP4 車両を引き渡す【2~5日前】

いよいよ車両と必要書類を引き渡す。査定の段階では荷物が載っていても大目に見てくれるが、引き渡す際は当然すべて引き上げなければならない。車がオークションに出された後では忘れ物を取り戻すのは困難だ。入念にチェックしておこう。

売買契約書は郵送で交わされることもあるが、車引き渡しのタイミングで契約書に捺印して契約成立とすることも多い。

なお、契約成立前ならキャンセル可能。車や必要書類を渡す前ならキャンセル料もかからないのが、ほとんどだ。大手買取店など一部で売買契約成立後にキャンセルできる店舗もあるが、期間は引き渡しから最長でも7日程度。その際は全額返金に加えて、陸送費や手数料を別途請求されることもある。

キャンセルしない場合でも、契約書はよく読むこと。そして納得できたら契約を交わし、車両と必要書類を渡すようにしよう。

気をつけたいのは、乗り替えをする際の「使いたいのに車がない」というミス。車を買取店に売って次の車は別の店で購入するケースは要注意だ。その場合は車両を引き渡すタイミングを次の車が来る直前に設定。そこから逆算してスケジュールを組めば、上手に乗り替えられるだろう。

STEP5 入金を確認する【0日前】

見積書どおりの金額が口座に振り込まれているか確認し、車の売却はフィナーレ。入金日は店舗によって異なるが、車の引き渡し日からだいたい2~5営業日程度だ。

手順を把握することが、手早く車を売るコツ

段取り良く手順をこなせば、申し込みから入金まで一週間かからないこともある。きちんと売却の流れを知っておけば、車の売却も楽勝だろう。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、Adobe Stock