解体1:車が到着してからガソリンが抜かれるまで 【廃車工場を見学】
車が到着したら、まず作業内容をチェック
ちょうどいま、車が入庫してきましたね。
うむ。工場に廃車が到着すると、まずは車をチェックして“作業指示書”というものが作られる。一台一台を管理するための、いわゆる入庫台帳じゃな。車名やエンジン形式、エアバッグの数などがひと目でわかるように記載するんじゃ。
病院のカルテみたい。えーと、エンジンASSY?オルタネーター?FrドライビングシャフトR/H? むずかしい用語がいっぱい書いてありますね…。
車の各部の名称じゃな。このとき、中古部品やリビルド部品としてリサイクル可能なパーツもチェックするのじゃよ。
博士、リビルド部品って何ですか?
知らんのか。中古部品をオーバーホールしたのがリビルド部品じゃ。きちんと分解整備してあるので再利用に支障がなく、新品よりも安価。これらは後ほどの工程でも触れることにしようぞ。
タイヤやバッテリーの取り外し作業
ここではタイヤとホイール、バッテリーを取り外しておる。
タイヤもリサイクルできるんですか? だいぶ使い古したものが多いみたいですが。
そうじゃ、廃タイヤも有効に再利用できるぞよ。サーマル・リサイクルという言葉を聞いたことがあるかな? つまり“熱回収”といってな、廃棄物を焼却したときに発生するエネルギーを回収・利用することで、化石燃料の代替とするんじゃ。タイヤの場合、セメントの焼成などに使われることが多いとされておるな。
なるほど、使い終わったタイヤは燃料にするんですか。
無論それだけではないぞ。マテリアル・リサイクルとして再生ゴムにしたり、トレッドを張り替えて再生タイヤを作ったりもするんじゃ。
では、ホイールとバッテリーはどうなるんでしょうか?
ホイールはアルミや鉄、バッテリーは鉛資源として、それぞれリサイクルされる。どうじゃ、こうしてみると車が資源の山に見えてくるじゃろ。
カッターによるガソリンの抜き出し作業
うわ、車になにか槍みたいなものを刺してますよ!
スラストカッターというそうじゃ。あれでタンクに直接穴を開けて、ガソリンを抜いておるのじゃな。
あんな大胆なことをして、ガソリンに引火したりしないんですかね。
そう思うじゃろ。じつは難燃性の窒素ガスを出しながら作業をしておる。心配は無用じゃ。
そこまで考えられているんですね。あ、あっちの傾いた車体はなんですか?
ガソリンタンクは、車種によっては複雑な形状をしとるんじゃよ。そのため残留ガソリンを残さず抜き取るためには、車を傾けたほうが効率のいい場合もあるんじゃ。
博士、素朴な疑問なんですが、抜き取ったガソリンはどうするんですか? もしもまだ使えるのなら、貰って帰りたいな…なんて。だって、ガソリン高いですし。
なんじゃ、そんな目で見ておったのか。あきれるわい…。
なにかおっしゃいましたか?
いや、なんにも。