解体2:廃油ラインからエアバッグの処理まで 【廃車工場を見学】
廃油、廃液処理ラインでの作業
ガソリンが抜けたら、今度はエンジンオイルなどの油脂類を抜いていくんじゃ。
車に入っている油や液体といえば…ええと。
エンジンオイル、LLC(ロングライフクーラント)、ウインドウウォッシャー液、ブレーキオイル、ミッションオイル、デフオイルなどがあるな。
それらを全部回収するんですか?
そう、全部じゃ。これらを回収しないままスクラップにしてしまうと、液体が漏れ出して深刻な土壌汚染や水質汚濁にもつながりかねんのじゃ。ここの設備では、従来の“自然落下方式”よりも抜き取りの効率がよい“吸引方式”を採用しておる。作業時間が短縮できる上、取りこぼしが少ないのじゃ。
早く回収できるということは、それだけたくさんの車をまわせるということですよね。やるなぁ。ところで、この廃油や廃液もリサイクルできるんですか?
主にエンジンオイルなどの廃油は、加温・遠心分離・濾過などを行えば再生燃料としてリサイクルすることができる。また、潤滑油も再生してリユースするんじゃ。LLCなどの廃液は濾過などを行えばリサイクルできるにはできるんじゃが、いまのところは再生品の需要がそれほどないため、環境負荷を防ぐための適正な前処理を行った後に焼却処分することが多いようじゃ。
なるほど。再生品を人々が意識的に求める社会になれば、さらに有効活用が進みそうですね。
学君も、なかなかいいことを言うじゃないか。
中古部品取り作業
廃油を抜き終わったら、そろそろ本格的な解体がはじまってくるぞ。ほら、あそこの車からダンパーやライトユニットが取り外されているのが見えるじゃろう? 作業指示書を確認しながら、パーツを外しているのじゃ。
ほんとだ。ようやく解体っぽくなってきました。
見えにくいかもしれんが、ドアの下から銅線の束が引き出されているじゃろ。あれはインパネ裏や内張りのなかに張り巡らされている配線じゃ。もちろん、この後の工程で回収される。
マフラーからクラクションのホーンにいたるまで、いろいろ積み上げられていますね。これらはどうするんですか?
正常に機能するものは中古部品としてリユースしたり、リビルド部品にすることもあるんじゃが、そうでないものは素材別にリサイクルされる。鉄であれば鉄。アルミであればアルミ。といった具合に分別するんじゃ。最近では、需要国への中古部品の輸出も増えてきたようじゃ。
エアバッグの適正処理
ここはエアバッグの処理をしている場所じゃ。エアバッグには火薬が使用されているゆえ、未使用のまま棄てたり破砕しようとすると爆発して危険なんじゃよ。
ふむふむ、扉を開けて、入れて、閉じて…。え、もう終わりですか? 一瞬ですね。
たしかに一瞬じゃが重要な作業じゃ。リサイクル法においても、シュレッダーダストやフロン類の回収とならんで適正な処理が促されておる。
工場長が持っているのはもしかして膨らみきったエアバッグですか?
そうじゃ。エアバッグの基布は一部でナイロン樹脂に再生されたりしておるが、こういったリサイクルを推進するためには自動車メーカーが一丸となって素材の統一を図ったり、取り外しの容易性を考える必要もあるんじゃ。