Report/西崎 博之
取材協力/株式会社 啓愛社 金沢リサイクル工場

じゃ、見学が終わったところで、少し補足をしておこう。

スラストカッターで抜き取った残留ガソリンのゆくえ

学君には黙っておったが、これは工場敷地内の一角にある給油所に貯蔵されておる。ガソリンの新古も、レギュラーもハイオクも、銘柄も、当然ながら混然としているために自分の車に入れるのは少々気が進まんところだが、これは工場の設備などを動かすために有効利用されている。立派なリサイクルと言えるじゃろう。



鉄→鉄のようなリサイクル以外で面白い例としては、窓ガラス→グラスウールや、シートの発泡ウレタン→車の防音材、エアバッグの端材→エンジンカバーなどがあるようじゃ。ちなみに今回の工場では、ガソリンエンジンを使った低公害の自家用発電機も商品化しておったぞ。



学君の感想文

はじめは面白半分で出かけた社会科見学でしたが、まさかこれほど熱中してしまうとは思いませんでした。廃車の解体工場というと、広い敷地に漫然とスクラップが積み上げられているイメージでしたが、その道の職人さんたちが車をバラバラにしていく様子は、マグロの解体ショーとまではいきませんが素早いです。あと、とくに見入ってしまったのは、リサイクル部品のストックヤードです。中古であれだけキレイな部品が手に入るんだったら、新品にこだわらなくても・・・と思ってしまいました。とても有意義な見学だったと思います。博士、ありがとうございました。

博士からのコメント

誰の目にも明らかなるほどに環境問題が浮上して、いよいよ尻に火がついてきた。自動車のみならず、各方面でリサイクル意識は高まってきているようじゃが、今日こうして現場に足を運んであらためて思う。製品の作り手と、それを使うユーザーと、リサイクル機関。この3者の連携なしには、いくら行政主導で施策を講じても理想的なリサイクルはおそらく実行されないのじゃ。

この先しばらくは、鉄をはじめとする有価金属の需要は増大し続けるじゃろう。この工場においても廃車の鉄のリサイクルをはじめた当初は、含有するカッパー(銅)をうまく取り除くことができずに粗悪な再生鉄にしかならなかったと聞いた。しかし今となっては、回収技術の進歩によって、廃車から出た鉄を再び新車にまわせるまでになったのじゃ。

レアメタルやレアアースといった希少な物質もしかり、それを廃製品から取り出す技術はますます高まるじゃろう。メーカーはこれらの技術とある程度は歩調を揃えながら、リサイクルを念頭に置いたモノ作りをしなくてはなるまい。そしてユーザーはそれらを適正に評価する目をもつこと。これが肝要であるとわしは思うがの。

それにしても見学を終えて、最後段階の車両を見たときの学君の顔は印象的じゃった。あとで工場長に聞けば、たまに同じように涙してしまう見学者がおるのだという。若いとは素晴らしいことじゃ。わしもあと50年若ければ・・・。