解体4:取り外されたエンジンとボディのスクラップ 【廃車工場を見学】
取り外されたエンジンの山
人の手で取り外せるものがすべて外されると、今度はニブラと呼ばれる重機で大きな部品を選り分ける。エンジンやマフラー、先ほど見えていた銅線などを、剥ぎ取っていくような作業じゃ。ここに積まれているのは、そのまま再生品としては使えないエンジンじゃな。
さっき工場長がエンジンを「白黒、白白」って言ってたのはなんですか?
エンジンのシリンダーヘッドとシリンダーブロックの、素材の組み合わせを指しているようじゃ。白黒がアルミ+鋳鉄という意味で、白白がアルミ。まあ、この場合のアルミは「アルミを主体とした合金」じゃろう。
業界用語ですね。すごい!
今さら言うまでもないじゃろうが、これらもそれぞれ分別してリサイクルするわけじゃ。
触媒の集積所
ここはずいぶん深い集積所ですね。中に積まれているのはマフラー?
触媒の入っているコンバーター部じゃな。触媒が排気ガスの浄化を担っていることは知っておるじゃろ?
はい、知っています。雑誌にメタルキャタライザーは抜けが良いと書いてあったので、何だろうと思って調べました。
触媒には、白金やパラジウムなどのいわゆるレアメタルが含まれておってな、その回収はとくに重要じゃ。レアメタルは、そもそも絶対量が少なく、最近は携帯電話などに使われるなど需要が高まっておる。だから触媒1個には微量しか含まれていないが、見逃すことはできん。これは他の電子部品にも言えることじゃな。
マフラーとボディのスクラップ
とうとう最終段階まで来たようじゃ。
マフラーが、まるでサイコロのように。もの悲しい光景です・・・。
有価物として選別されたこれらはハードプレス機によって押し固められたあと、電炉メーカーに供給されるそうじゃ。そう、生まれ変わるのだ、なにも悲しむことはないぞ。
ボディも、こんなに小さな長方形になるなんて。このタクシー、何万kmを走ってここに来たのだろう・・・。博士は平気でも、僕にはショッキングです。
泣いておるのか、学君。キミは優しいのじゃな。そして、車が好きなんじゃな。しかし、どんなに愛した車でもいつかはこうなるのじゃ。新しく買った車の鋼板に、むかし乗っていた愛車の魂が宿っているかもしれない。そう考えるとラクになるじゃろ。
博士・・・。僕は今日、ここに来てよかったです。
そうか、そうか。わしも連れてきた甲斐があったわい。