▲ボディに傷があるからといって、売る時に心配する必要なし! ▲ボディに傷があるからといって、売る時に心配する必要なし!
 

傷がある車だって買い取ってもらえる

いざ車を売るという段階になって、ボディについた傷やヘコミが急に気になり始めた……というのはよくある話。傷があると査定額にはどれくらいの影響があるのだろうか? また傷が付いている車をできるだけ高く売る方法はないか調べてみた。

 

傷&ヘコミによるマイナス査定額

車のボディに付いた傷やヘコミは査定額に少なからず影響する。査定する側はどのような基準でボディへのダメージを評価しているのか、まずは解説する。

実際の買い取りではスタッフが車の状態を細かくチェックした上でコンディションを5~10程度の段階で評価。その上で、車種や年式、走行距離や状態ができるだけ近い物件のオートオークション落札履歴を参考に、査定額を決める場合が多い。評価の精度だけでなく、査定のスピードも重視しているからだ。

傷やヘコミがある場所によってマイナス額は違う

だが、前述の方法はスタッフごとの経験則に頼る部分が大きく、根拠が分かりにくい。

そのため、「JAAI」(日本自動車査定協会)が採用する方法を紹介。これは事故時の損害賠償額を求めたり、相続や財産分与で車の資産価値を評価したりするときなどにも用いられる。

出典:JAAI「査定とは」

▲JAAIは査定を標準化するために設立されている第三者機関。傷やヘコミの評価額を誰が査定しても同じ結果になるよう定めている ※出典:JAAI「査定とは」

JAAIでは車種や年式、グレードごとに定められた基準価格から、装備内容や走行距離、故障や傷などに応じて加減点する方式で、車の査定額を出している。点数は1点=1000円で、当然ボディのダメージは減点対象だ。

傷やヘコミは程度やサイズ、部位に応じて細かく減点数が定められている。ダメージの程度は「塗装のみ」「板金(塗装含む)」「交換」に分類。「塗装のみ」は浅い傷のこと、「板金(塗装含む)」はヘコミ、「交換」は板金塗装での修復不可能なダメージと思っていい。

そして傷やヘコミは「カードサイズ未満(54×86mm程度)」「カードサイズ以上A4サイズ(210×297mm)未満」「A4サイズ以上」と大きさでも減点数が分かれている。

JAAI「中古自動車査定基準及び細則」

▲傷やヘコミの程度、損傷箇所による減点数を定めたJAAIの表。「カードサイズ以上A4サイズ未満」は小、「A4サイズ以上」は大と表記している ※出典:JAAI「中古自動車査定基準及び細則」

また、車格によって係数が決められている。例えばトヨタ プリウスなど(クラスIII)は1倍、日産 スカイライン(クラスII)などは1.2倍、トヨタ クラウン(クラスI)で1.4倍、レクサスLS500など(クラス特C)は2.2倍で計算される。高級車ほど、塗装などにかかる費用も高くなるからだ。

部位によっても減点数が異なる。ボディサイドシルやリアエンドパネルなど目立たない所は低め、ルーフなどパネル一枚あたりの面積が大きいものは高めの点数に設定されている。同じ大きさの傷でも、パネルが大きいと全体を塗装しなくてはならないからだろう。

では、具体的にいくら減額されるのか見てみよう。例えばフロントドアに“10円パンチ”されたケース(4ドア車・コンパクトクラスの場合)。カードサイズ未満の大きさなら−10点=−1万円、カードサイズ以上A4未満で塗装のみで済むなら−20点=−2万円となる。それ以上の大きさなら−30点=−3万円で、さらに凹んでいるなら−50点=5万円だ。

▲塗装のみで直せるボンネットについた傷ならA4サイズ以上でも-3万円程度▲塗装のみで直せるボンネットについた傷ならA4サイズ以上でも-3万円程度

ちなみに1cm以下の傷はこの表に含まれておらず、なんと減点はつかない。中古車なのだから、小傷程度はあって当然という考え方なのだ。

 

ボディの傷は直さずに売ってOK

「思ったほど大幅な査定ダウンじゃない」と思ったかもしれない。しかし、実際には10円パンチのような外板表面を擦っただけの傷はまれだろう。「電柱にドアをブツけた」などの場合はダメージが複数のパネルに及んで板金、最悪の場合は交換が必要になる。交換の場合はドア一枚で80点=8万円の減額だ。

▲交換でなく修理で対応できるバンパーの傷なら-3万円程度▲交換でなく修理で対応できるバンパーの傷なら-3万円程度

しかし、元通りに修理するには査定減額分以上の費用がかかる。つまり、傷やヘコミがついても売却直前なら修理する必要はなく、そのまま売った方がオトクなのだ。

逆に売却まで時間があるなら、早めに修理しよう。傷を放置しておくとサビなどが発生し、ダメージが拡大する可能性がある。

 

傷やヘコミのある車を売るときのポイント

では、傷やヘコミのある車を売る時、少しでも査定ダウンを減らすには、どうしたら良いのか? ベテラン買取店員に聞いたポイントを紹介する。

・目利きの良いスタッフに査定を頼む
経験の浅い査定スタッフには、傷やヘコミの程度を見分け、車の価値がいくら下がったのか瞬時に判断するのは難しい。その場合、買い取って損をしないため、大きく減額査定するという。

一方でベテラン査定士は短い時間でもJAAIの基準で査定したのと同様に正確な金額を弾き出せる。つまり、買い取る側の利益が出せるギリギリの査定額を提示できるから、高額査定につながりやすいのだ。

そうなると、目利きが良いスタッフをどうやって探すかが問題となる。ピンポイントで見つけることは不可能に近いが、多くの買取店に査定依頼できる一括査定なら簡単に解決できる。最終的に一番高い査定額を提示してくれる人を選べば良いだけだ。

・修理の際、できるだけ交換はしない
これは売却するまでに時間があって、傷を修理する前提の話。本来は板金塗装で直せる程度の傷なのに、修理工場に任せるとパネルごと交換されることがある。他損事故で修理に相手の保険を使う場合や、自損事故で車両保険を使って直す場合などだ。

仕上げの美しさを求めるならそれもアリだが、査定のことを考えるとNG。交換は大きな減額。さらに交換箇所によっては修復歴アリになる。ダメージの程度にもよるが、できるなら板金塗装で直して欲しいことを修理工場に伝えよう。

・DIYで直さない
ヘタに傷を直すくらいなら、そのままの方がマシ。なぜならプロは最低限の修理範囲で傷を直してくれるが、慣れない人が缶スプレーなどで直すと塗装される面積が広くなり、それを修復するのにかえって費用がかかるからだ。

また、プロに頼む際も腕のいい職人を選んだ方がいい。傷やヘコミが直っていても修理や塗装されたことが分かる状態だと減額されてしまう。

▲売却時のことを考えると、小さな傷でも自分で補修するのは控えた方がいい▲売却時のことを考えると、小さな傷でも自分で補修するのは控えた方がいい
 

傷のある車を買い取ってもらうベストな方法

車に傷やヘコミがあっても、修理費用以上に査定が減額されることは少ない。最近では、自社に板金塗装工場を備えてボディにダメージのある車を積極的に買い取る大手買取店もある。一括査定なら、そうした買取店を含めた幅広い選択肢の中から売却先を選べ、オトクに売却できる。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、photoAC