▲車を売る方法は「下取り」と「買い取り」がある。その違いと両者のメリット・デメリットとは? ▲車を売る方法は「下取り」と「買い取り」がある。その違いと両者のメリット・デメリットとは?

購入とセットが下取り。専門業者に売るのが買い取り

車の売り方には「下取り」と「買い取り」があり、中古車業界では両者を明確に使い分けている。

「下取り」と「買い取り」の違いを把握したうえで、自分により適した方法を選ぶことが大切。そこで両者のメリットとデメリット、オトクに車を売るためのポイント、手続きの方法などを解説する。

まずは両者の違いから説明しよう。

下取りは「新たな車を購入するのと引き換えに売却する」こと。当然、売却先は次に車を購入する新車ディーラーや中古車販売店などになる。

対して、買い取りは「購入と関係なく、買取専門業者などに車を売ること」を指す。

買うのとセットで売るのが「下取り」、買取専門業者に売るのが「買い取り」と覚えて間違いない。

売却する状況と売却先の違いにすぎないが、これにより売却額や手続きの方法に様々な差が生まれている。

下取りと買い取りでは売却価格が決まる仕組みが異なる

下取りと買い取りには様々な違いがあるが、最も大きく異なるのは「車の査定基準」だ。

下取りでは主に「日本自動車査定協会」などが車種ごとに定められた金額を元にし、個々の車の状態を見ながら減点、加点する方式で査定される。

古い車などデータがない場合には、販売店独自の基準額で査定することが多い。

対して、買い取りは業者間で車を売買する「オークション」での相場、つまり実績をベースに減点、加点していく。大手買取専門業者では独自の評価基準を導入していることもあるが、それもオークション相場のデータが土台。

一概には言えないが、実績をベースにしているため市場の変化に敏感で、下取りに比べると高い金額がつきやすい。

では、このような違いが生まれるの何故か? そもそも、新車ディーラーなど下取りを行う業者は「車を売る」ことが本業。「車を買う」ことには力を入れていない。

サービスの一環として以前の車を引き取ることで、ユーザーの利便性を上げるのが主な狙いだ。また、販売はともかく、下取り額で他社と競争しようという意識も低い。

そのため、査定額は安全マージンを見て、低めに提示されることとなる。

対して買取専門業者は、買った車を市場に流通させることが本業。

同業他社もたくさん存在するため、いかに他社に負けない金額で買い取り、素早く市場に流すかが重要となる。

複数の買取専門業者に査定を同時に依頼できる「一括査定」という方法があるのも、そうした競争こそが高い査定額につながりやすい仕組みになっているからだ。

ちなみに、日産やトヨタでは新車ディーラーで下取る場合の参考価格シミュレーターをサイト内で公開している。他メーカー製の車でも、参考価格を調べることが可能。

ただ、実際の下取り価格は地域や時期、車の状態によって大きく変化する。あくまで目安程度に留めておく必要があるものの、車を売却する際の参考にはなるだろう。

日産 下取り参考価格シミュレーション

出典:トヨタ「下取り参考価格情報」

▲トヨタのサイトなら、他メーカーの車でも下取り価格を調べられる! ※出典:トヨタ「下取り参考価格情報」

下取りと買い取りのメリットとデメリット

下取りと買い取りには以下のような違いがある。

■下取りのメリット
・次の車購入と同時に、ワンストップで売却できる
・下取り代金は自動的に次に購入する車の支払いに充てられるため、お金の出し入れが必要ない
・新車から値引きしきれない分の金額を下取り額で補填してくれるケースもある

■下取りのデメリット
・買い取りよりも査定額が安くなりやすい。特に新車ディーラーに買い取ってもらう場合、他メーカーの車は低く評価されやすい
・買取専門店でより高い査定額がついていても、下取り額を考慮してくれることはほぼない
・購入金額より売却金額が低い場合、売却金額を他の目的に使えない
・査定が有料であることが多い

■買い取りのメリット
・買取額が高い傾向にある
・アフターパーツを含め、人気装備などが高く評価されやすい
・改造車など個性的な車でもカスタム専門の買取店などでは高く評価されることがある。
・売却で得たお金を何の目的にでも使える
・査定料無料の店舗が多い

■買い取りのデメリット
・相場に対して敏感なので、車種やタイミングによっては査定額が低くなることもある
・複数の業者と交渉する場合は対応が面倒

売却額と利便性を見比べて、より自分に適した方を選ぼう。なお最近では、自動車メーカー直系の買取専門店が登場したり、買取専門店でも車を販売したりするなど、両者の差が少しずつ小さくなりつつある。

下取りで高く売るためのポイントは、比べること

下取りで損をしないためにも、一度は買取専門業者で査定しよう。買い取り査定額が圧倒的に高いなら、次の車の購入と現在乗っている車の売却を別の店にするのも一つの手だ。

その際、下取り額と、購入する車からの値引き額を曖昧にされるケースが多いので注意。新車ディーラーなどでは車種や時期ごとに値引きの上限額が決められていることが多く、その分、下取り額を高くしてくれるケースもある。だから、条件が曖昧なままで今乗っている車を買い取りに出した場合、当初の総額を下回る可能性がある。見積書の内容をチェックし、値引き額がいくら、下取り額がいくらなのかを販売員にはっきり確認しよう。

高く下取ってもらうには日頃のメンテが重要

下取り査定時に少しでも高額を提示してもらうためには、売却直前に慌てて洗車するだけでなく、小まめなメンテナンスが大切。普段からコンディションを良好に保っているよう心掛けよう。

車種や仕様、条件(年式や走行距離)が同じであっても、査定額は車のコンディションによって加点減点されるからだ。そのポイントは下記の通り。

・可能なら屋根下に保管しよう
外板の塗装や内装の状態が悪いと大きく減点される。風雨によるボディへのダメージを軽減するため、密閉式のガレージやカーポートで保管するのがベター。月極駐車場などで難しい場合はカバーを掛けるなどして対策しよう。

▲シャッター付きガレージが理想だが、屋根があるだけでも塗装を守る効果は大。塗装の状態によっては査定価格に大きな差が出る▲シャッター付きガレージが理想だが、屋根があるだけでも塗装を守る効果は大。塗装の状態によっては査定価格に大きな差が出る

・DIYでの補修は逆効果
外板を傷付けた箇所を自分で直しても査定員にはほぼ間違いなくバレる。慣れてないと傷を広げてしまう可能性もあるので、そのまま査定に出すのが無難だ。

・下まわりはマメに洗車してサビを防ごう
車の下もチェックされる。海辺や雪上を走行した後は、すぐに洗車することを心がけたい。

▲ブレーキまわりやマフラーなどは特に錆びやすい部分。手が届かないところも高圧洗浄機などで念入りに▲ブレーキまわりやマフラーなどは特に錆びやすい部分。手が届かないところも高圧洗浄機などで念入りに

・車内は禁煙に
禁煙か喫煙かも査定項目。タバコは臭いやヤニがつかないよう、車外で吸うようにすること。

・ペットを乗せる際は、シートカバー+ケージを準備
ペットを乗せて内装が傷ついたり臭いが染みついたりすると、大きく減点される。ペットが内装を汚さないよう注意を払おう。

▲査定ではペットを乗せていた痕跡や喫煙の痕跡もしっかりチェックされる。車内のニオイは消しにくいので、普段からニオイがつかないように配慮しよう▲査定ではペットを乗せていた痕跡や喫煙の痕跡もしっかりチェックされる。車内のニオイは消しにくいので、普段からニオイがつかないように配慮しよう

・カスタムしても、純正品を保管しておこう
下取りの場合、カスタムが高評価につながるケースは少ない。タイヤやアルミホイールなどを社外品に交換する場合も、純正品をきちんと保管しておくべし。

売却に必要な書類と手続きについて

売却時に必要となる書類や手続きは、下取りも買い取りも同じ。必要な書類は普通自動車と軽自動車、個人名義、法人名義で異なる。

■所有者が用意するもの

・自動車検査証(車検証)
車検を通したことを証明する書類。売却時に限らず、車両運行時には必ず携行が求められる。売却時は引っ越しや結婚などで車検証の記載と、氏名や住所が違ってないかチェックしよう。また、自動車検査証と印鑑登録証明書の住所が違う場合、次の書類も必要だ。

・住所変更が一度の場合:住民票(法人の場合は登記簿謄本)
・住所を何度か変更した場合:戸籍の附票または住民票の除票
・結婚などで姓が変わった場合:戸籍謄本(履歴事項全部証明書)

また万一、紛失した場合は、管轄する陸運支局で理由書と手数料納付書、第3号様式という申請書(陸運支局にOCR用紙がある)を提出すれば即日で再発行できる。委任状があれば代行してもらうことも可能だ。

なお、ローンが残っていたりして所有者と使用者の名義が異なる場合は、そのまま売却することはできない。別途「移転登録(いわゆる名義変更)」が必要となる。

・印鑑登録証明書(軽自動車は不要)
市区町村(法人の場合は法務局)が証明する実印の登録証書。普通自動車を売却する際に必要となる。発行日から3ヵ月以内までが有効期限となる。売却時は2通の提出が求められる。

・自賠責保険証明書
いわゆる強制保険の加入証明書。この書類がなかったり、期限が切れていたりすると自賠責保険を次の所有者に名義変更できない。引き継がれる分の費用は次の所有者から回収され、売却額に上乗せされるケースが多い。紛失した場合は、加入した保険会社に申請すると再発行できる。

・自動車納税証明書
自動車税が未納だと次の車検を受けられない。そのため、売却時には最新の納税証明書が必要だ。書類の有無だけでなく、収納印が押されているかも確認すること。

紛失しても納税されていれば、名義変更と車検を受けられるので売却先に相談してみよう。それでも必要な場合には、普通自動車は自動車税事務所で、軽自動車は市区町村役場で再発行可能。

・実印 (軽自動車は認印可)
普通自動車の売却には、市区町村で登録した「実印」が必要。買取店が用紙を用意する委任状や譲渡証明書、自賠責保険の名義変更に必要な書類などに捺印する。軽自動車の場合は認印でOKだが、スタンプ印は不可。

・振込口座情報
売却金額を先方に振り込んでもらい際に必要。金融機関名、支店名、口座番号、口座名義を伝える。

・リサイクル券
自動車リサイクル料金が支払われていることを証明する書類。紛失してしまっても再発行できないが、「リサイクル料金検索」から「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷することで、リサイクル券の代用できる。

■自動車買取店に用紙があり、記入するもの

・譲渡証明書(普通自動車のみ)
・自動車検査証記入申請書(軽自動車のみ)
・委任状


上記のうち、特別に取り寄せる必要があるのは、普通自動車を売却する際の「印鑑登録証明書」のみ(住所や姓の変更があった場合を除く)。他は紛失しない限り、持っているあるはず。普段からしっかり管理しておこう。

▲売却時の必要書類は万一紛失してしまっても再発行や代用が可能。手間を防ぐためにも普段から所在を確認しておくこと▲売却時の必要書類は万一紛失してしまっても再発行や代用が可能。手間を防ぐためにも普段から所在を確認しておくこと

下取りに出す時の流れ

買い取りよりユーザーの手間が少ないのは、下取りを利用する大きなメリット。以下、検討から売却までの流れを説明する。

STEP1 現在乗っている車の査定依頼をし、売却先を決める
購入する店舗に加え、買取店にも査定依頼するのがベター。金額を見比べて売却先を選ぼう。もちろん手間を省きたいなら、しなくてもOK。

STEP2 売却・購入の手続きをする
買い替え(=下取り)の場合、印鑑登録証明書などは購入と売却それぞれに必要となるので、同時に発行した方が効率的。役場などに出向く回数をなるべく減らそう。

STEP3 車両を引き渡す(次の車と入れ替え)
買い取りの場合と異なり、購入先で現在の車を引き渡すだけ。手間が少なくて済むのは下取りの良いところ。

STEP4 差額がある場合は確認する
購入額よりも売却額の方が多い場合、差額を受け取る。見積書と同額か確認しよう。

下取りと買い取りを見比べてオトクに車を売却すべし!

現状では車の乗り替え、特に新車の購入では「買い取りよりも下取りを利用する方が多数派」と言われている。その理由は多くの人が購入と売却が同時にできる利便性を優先してのことだろう。

ただ、ほんの少しの手間で売却額に大きな差が出るとしたら、買取店に査定してもらうのもアリ。特に、複数の買取専門業者に依頼できる「一括査定」なら高く売却できる可能性も高まる。手間よりオトクに乗り替えたいなら、下取りと買い取りを見比べて検討する余地は大いにあるはずだ。

text/田端邦彦